自分の気持ちをうまく言えない子に、家庭でできること
嫌だったことや困ったことがあっても、うまく言葉にできずに黙ってしまう子は少なくありません。
「何があったの」と聞いても首を振るだけだったり、「別に」と返ってきたりすると、どこまで聞けばよいのか悩むことがあります。けれど、言葉が出てこないからといって、気持ちが動いていないわけではありません。
自分の気持ちを少しずつ言葉にできるようになると、人に伝える力だけでなく、自分の中を見つめて考える力も育っていきます。家庭での会話は、そのきっかけを作る大切な時間になります。
AppleとGoogleの認定教育者。デジタル庁のデジタル推進委員。名古屋大学で教育方法学研究に取り組んだ探究学習の専門家。子どもが自分で問いを持ち、考えたことを言葉にできる学びを大切にしています。
この記事では、次のことをお伝えします。
- 黙ってしまう時間に起きていること
- 急いで言わせないほうがいい理由
- 家庭でできる関わり方
- 言葉にする力はどう育っていくか
- みらゼミが大切にしていること
子どもが自分の言葉で考えようとする場面は、日々の会話の中にたくさんあります。家庭でうまくいかない日があっても、問いを大切にする姿勢は少しずつ伝わっていきます。
黙ってしまう時間に起きていること
子どもが黙ってしまうと、大人は何を感じているのか分からず、不安になることがあります。学校で嫌なことがあったのか、誰かに何か言われたのか、いろいろ考えてしまうのは自然なことです。
ご家庭で子どもと向き合っていると、こんな場面はありませんか。
- どう答えればよいのか、その場で迷ってしまう
- 急いでいると、会話を早く終わらせたくなる
こうしたやり取りは、多くのご家庭にある自然な場面です。
ただ、言葉が出ないとき、子どもの中で何も起きていないわけではありません。自分の気持ちがまだぼんやりしていて言葉が見つからないこともあれば、気持ちはあるのに、うまく話す自信が持てないこともあります。まだ自分の中の感覚と、ぴったり合う言葉が結びついていないこともあります。
低学年の子は、とくにその傾向があります。悔しい、恥ずかしい、悲しい、腹が立つ。そうした気持ちは動いていても、それを一つに決めて言うことが難しいことがあります。だから「何があったの」と大きく聞かれると、どこから話してよいか分からなくなってしまうことがあります。
「別に」と返ってくる場面にも、本当はいろいろな気持ちが入っています。うまく言えない、まだ話したくない、どう言えばよいか分からない。そうした揺れがあるときに、言葉の少なさだけを見てしまうと、子どもの中で起きていることが見えにくくなります。
急いで言わせないほうがいい理由
黙っている時間が長いと、親としては何とか言葉を引き出したくなります。気持ちを話せたほうが楽になるはずだと思うからですし、放っておくことに迷いが出るのも当然です。
それでも、急いで答えを決めたり、「悲しかったの?」「怒ってるの?」と先回りしすぎたりすると、子どもは自分の感覚を探す前に会話を終えやすくなります。親が用意した言葉に乗ることはできても、それが本当に自分の気持ちだったのかは曖昧なままになりやすいからです。
言葉にならない時間は、見ている大人にはもどかしく映ります。けれど、その時間の中で子どもは、自分の中にある感覚をつかもうとしています。そこを急がせないことは、黙ることを許すだけではなく、自分の気持ちに向き合う時間を守ることでもあります。
話せるようにすることばかりを急がないほうが、かえって言葉は育ちやすくなります。安心して探せる時間があると、子どもは自分の言葉を少しずつ持ちやすくなります。
同じ場面でも、言葉の選び方が変わると子どもの反応は少しずつ変わっていきます。
つい起こりがちなこと
- 大人が先に答えを言ってしまう
- 会話がすぐに終わってしまう
学びにつながりやすい関わり
- すぐに答えを言わず、子どもの言葉を待つ
- どう思ったのかを聞いて会話を続ける
家庭でできる関わり方
大きく聞くより、小さく聞くほうが話しやすいことがあります。「今日いやだったことあった?」より、「休み時間は何してた?」「そのときどんな顔だった?」と場面を小さくすると、子どもは答えやすくなります。
気持ちの名前をそのまま言えない子には、「悔しかった感じかな」「びっくりした感じかな」と選びやすい言葉をそっと置くのも一つの方法です。答えを決めるのではなく、言葉の候補を渡すイメージです。子どもが「それに近い」「ちょっと違う」と返せるだけでも、会話は動き始めます。
絵を描きながら、夕食を食べながら、寝る前に布団の中で。向かい合って話すと話しにくい子もいます。言葉は、真正面から聞かれたときより、少し気持ちがゆるんだ時間に出てくることがあります。話す場所や時間を変えるだけで、言いやすさが変わる子もいます。
毎回深く話せなくてもかまいません。「今日は言えなかったね。でも話したくなったらいつでも聞くよ」と伝わることに意味があります。言葉が少ない日にも、受け止めてもらえた感じが残ると、子どもは次に話す力を持ちやすくなります。
言葉にする力はどう育っていくか
自分の気持ちを言葉にできるようになることは、人に伝える力を育てるだけではありません。自分が何を感じ、何を考えているのかを見つめる力にもつながっていきます。
気持ちに名前がつくと、子どもは自分の中で起きたことを振り返りやすくなります。「なんとなく嫌だった」が、「仲間に入れなくてさびしかった」や「うまくできなくて悔しかった」に変わると、自分の中で次にどうしたいかも考えやすくなります。
言葉にする力は、もともとの話し上手さだけで決まるものではありません。受け止めてもらえた経験、言い直しても大丈夫だと思えた経験、すぐに決めつけられなかった経験の中で少しずつ育っていきます。
家庭でそうした経験が積み重なると、学校や友だちとの関わりの中でも、自分の気持ちや考えを前より言いやすくなります。それは、そのまま考える力や伝える力の育ちにもつながっていきます。
ご家庭での関わり方と教室での学びがつながると、子どもの言葉や表情は少しずつ変わっていきます。ここからは、みらゼミが授業の中で大切にしていることをお伝えします。
みらゼミが大切にしていること
みらい人材ゼミナールでは、子どもが自分の考えや感じたことを言葉にする時間を大切にしています。すぐに正しい答えを言うことより、自分の中で起きたことを言葉にしながら考えを深めていくことに意味があると考えているからです。
探究学習や対話の場では、最初から上手に話せる子ばかりではありません。迷いながら話したり、途中で言い直したりしながら、自分の考えを少しずつ形にしていきます。そうした時間があることで、子どもは自分の言葉に自信を持ちやすくなります。
家庭での受け止め方と教室での学びがつながると、子どもの言葉は少しずつ増えていきます。話すことそのものを急がずに、言葉になるまでの時間も大切にしたいと私たちは考えています。
みらゼミでは、子どもが自分で問いを持ち、考えたことを言葉にしていける授業を大切にしています。
ご家庭での関わり方とあわせて、子どもの学び方を育てる場を探している方は、ぜひ授業の雰囲気をご覧ください。